エマルション・チェンバー構造

 JACEE で使用しているエマルション・チェンバーの構造は大きく分けて
   ・電荷決定層(Primary section)
   ・標的層(Target section)
   ・間隙層(Spacer section)
   ・エネルギー決定層(Calorimeter section)
の4つの部分で構成されています。

 電荷決定層(Primary section)は 厚さ ( 200 - 400 ミクロン、50 - 100 ミクロン ) の原子核乾板、個体検出器 CR - 39 の層からなっておりこれらをつかって1次宇宙線の電荷を 決定しています。JACEE では Z : 1 〜 26 の原子核について電荷が測定されており、その測定 精度は ΔZ : (0.1 〜 2)e です。電荷の決定は Z の小さい原子核については原子核乾板を使 ってTrack grain density、Gap length distribution を測定して行っています。また、Z の大 きい原子核については Delta ray range distribuition を測定して決めています。陽子、ヘリウ ム原子核については感度のことなる原子核乳剤を使うことによって、入射天頂角の小さい事象に ついても分離は十分にできています。また、重粒子原子核については CR - 39 などの個体検出器 を使って精度よく電荷を決めています。

 標的層(Target section)は約 50 ミクロンの thin emulsion plates と原子番号 Z の小さいアクリル板をサンドウィッチの層にした構造になっています。そして、 それにより原子核相互作用の確率を高め、光子の対創生の確率を低め、電磁カス ケード・シャワーの発達を抑えています。

 間隙層(Spacer section)はpaper honeycombで作られた約 10 cm ほどの Drift space であり、5 mm の間隔で emulsion plates が挿入されています。これに より、標的層で起こした原子核-原子核衝突により発生した2次粒子のCharged particle emisson angle を10-5 mrad の精度で決定することができます。
 最近の1次宇宙線の元素組成、エネルギー・スペクトルの観測を主たる目的 にしたチェンバーでは間隙層を入れておりません。

 エネルギー決定層(Calorimeter section)は Lead sheets ( 1 mm、2.5 mm thick )、X - ray films(Sakura - N type X - ray film、エマルションの厚さ 25 ミク ロン、ベースは 175 ミクロンの polyester、両面塗り)と thin emulsion plates をサンドウィッチにした層であり、光子による電磁カスケード・シャワーを観測 することにより、原子核相互作用により光子に行ったエネルギーを決定すること ができます。

 実験で使用している典型的なエマルション・チェンバーの大きさは40cm X 50 cm2 (面積 0.2 m2)であり、厚さは約 7 輻射単位、0.25陽子相互作用平均自由行程 です。
 また、チェンバーの取り付け精度は〜 150 ミクロンです。


JACEE Collabration