気球で宇宙線に露出された
エマルション・チェンバーは回収後写真(JACEE-12 )にあるようにパッキングされて
戻ってきます。戻ってきたチェンバーは解体後、ただちに X-線フィルムと原子核乾板
は現像され、CR-39 はエッチングが行われて初期解析にまわされます。
初期解析では、ライトテーブルの上でカロリーメータ層に挿入されたX-線フィルムを 肉眼で観察しイベントを探します。そして、見つかったイベントの位置を方眼紙上にマ ークすることによりイベントマップを作成します。そのときに、イベントには識別用に イベント番号が順番に付けられます。これらの作業は数人の手作業で行われています。
イベントマップの作成が終了すると、それに基づいて各イベントについて
カロリーメータ各層でのX-線フィルム上の黒化度を(スリットサイズ 200 〜 300
ミクロン)フォトメータを使って測定します。それにより黒化度の遷移曲線を
得ることができます。次に、測定で得た遷移曲線に、理論的に計算した遷移
曲線をフィットさせることによりシャワー・マキシマムでの黒化度 Dmax を
求めます。そして、求めた Dmax の値に基づいてイベントを整理し、Dmax の
大きな(エネルギーの高い)イベントより顕微鏡下で原子核乾板に写った
イベントをトレースし(写真)チェンバー内での原子核衝突の場所を探して行きます。
イベントのトレースは熟練にいる作業ですが、誰でもが少しでも容易にできるように
今ではコンピュータ支援による顕微鏡トレーシングシステムが開発されて使用されてい
ます。
衝突点の見つかったイベントについては、相互作用を起こした親を同定し
その電荷を決めます。また同時に、親の周りに親と同じ方向に平行に走って
いるイベントが無いかを確認し、確かに 1 次宇宙線が起こしたイベントである
ことを確かめます。原子核衝突で光子に行ったエネルギーはエマルション・
チェンバーの構造の詳細を考慮したモンテカルロ・シミュレーションにより
得られた Dmax と Σ Eγの値を比較して決められます。このように
して得られた、イベントの詳細情報はデータベースとしてまとめられ次の解析
にまわされます。
最終的な解析は、各研究機関が作成したデータベースを持ち寄り行われます。 分散して測定されたチェンバーを一ヶ所に持ち寄り集中解析が行われます。 この解析ではデータベースに基づいて、お互いに解析したチェンバーを 再チェックすることにより親の見間違い、測定間違い洗い出します。そして、 最終的にエネルギー・スペクトルの算出に使用するイベントを選択します。 選択されたイベントを使って所定の手続きを経て物理的な結果が求められます。